丸屋 武士(著)
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 周知のように1337年11月1日、イングランド王エドワード3世がフランスに対して宣戦布告しついに始まった百年戦争の原因は、直接的にはフランス王フィリップ6世が、フランスのアキテーヌにあるイングランド王の領地を没収しようとしたためである。1340年、イングランド王の紋章は、リチャード獅子心王以来の「赤地に横向きの3頭の金(黄)のライオン」に、フランス王の紋章である「青地に金のゆり小紋」を加えたいわゆる四つ割り紋に改変された。エドワード3世の母イザベルはフランス王フィリップ3世の娘であり、これによってエドワード3世はフランス王位を要求していたのである。なおこの時から従来の紋章盾の上に、ヘルメット(兜)とクレスト(兜飾り)が加えられるようになった。
 シリーズ1で紹介したボーフォート(Beaufort)家の紋章は、この四つ割り紋となったイングランド王の紋章の縁を銀(白)と青の帯で囲ったものになっており、ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジの鉄門の上に飾られたそれは見事なものである。よくいわれるボーフォート家の落とし格子(portcullis)は同家のバッジ(badge)であって、紋章(coat of arms)ではない。 <了>
(1985/11 撮影)
参考文献
「The DICTIONARY OF NARTIONAL BIOGRAPHY」
     (OXFORD UNIVERSITY PRESS刊)
G.M.トレヴェリアン著 大野真弓監訳
     「イギリス史」(みすず書房刊 1973年)
福田恒存著「私の英国史」 (中央公論刊 1975年)
森 護著「英国紋章物語」 (三省堂刊 1985年)
(2003年8月)
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