丸屋 武士(著)
(2003年8月)
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 1984年エリザベス女王が出席して創立500年祭(Quincentenary)を催した紋章院(The College of Arms)は、1484年国王リチャード3世によってはじめて設立を許可された。ところが、このシリーズ1(マーガレット・ボーフォートの生涯)で紹介、説明した通りリチャード3世がその翌85年、バラ戦争最後の戦いであるボズワースの戦闘において戦死したため、改めて1555年メアリー女王によって設立特許状(Royal Charter)を与えられた。以後、紋章使用の許認可、紋章係争の審判等、紋章事務一切を統括する官庁として今日まで機能している。
      上 エリザベス2世の大紋章(Achivement)
下 紋章院の紋章(coat of arms)
(1985/11 撮影)
 一方、独特の制服をまとった紋章官が、議場の扉を剣の柄頭(つかがしら)で突くことを合図に開場される「国会の開院式」の場面をテレビニュース等で目にされた方も多いと思う。国会の開院式以外にも、戴冠式、立太子式、王族の結婚式や大葬(例えば最近ではダイアナ妃の葬儀)等、国家的セレモニーには王室式部官を統括する紋章院総裁以下全ての紋章官(herald)が出席し、筆頭紋章官とでもいうべきガーター・プリンシパル・キング・オブ・ アームズ(Garter Principal King of Arms)の指示によって儀式が進行される。真紅の地に金糸銀糸でイギリス王の紋章を刺繍した紋章官特有の制服は、伝統の国(Land of Heritage)イギリスを鮮やかに演出している。

エリザベス2世の大紋章(achievment)
(1985/11 撮影)
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