意志力道場ウォークとは
意志力道場 設立趣意書
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3.意志力鍛練の基本
 野球なり柔道なり、それぞれのスポーツに応じてスポーツ選手になるためには、その道にそったトレーニングが必要です。同じように意志力を高めるためには訓練が必要であります。そして意志力が決して天与のものでなく、訓練すれば向上するということ、意志力こそは鍛えれば強くなり、鍛える道があるということをこの際強く認識しましょう。
 その訓練とはどのようなものであるのか。仏門に入って修行するとか、軍隊に入って特殊訓練を受ける、あるいは体育会系クラブに入って鍛えてもらう等々のことが頭に浮かぶ人もあるでしょう。仕事(事業)そのものの遂行によってそれが可能であると答える人もあろうかと思います。
 しかしながら、幸いな事には普通に生活する者、老若男女誰にとっても無理なく、しかも日常生活の中で十分可能な訓練方法が実に身近なところに存在するのです。当『意志力道場 ウォーク』はそれを普及奨励するために設立されました。
3−1 気負い立たない(大局着眼、小局着手)
 意志力を強化しようとする人にとって絶対に避けなくてはいけない事があります。それはいきなり大きな目標を立て、始めからそのために長時間を費そうという気負い立った姿勢をとることです。
 病気やけが、あるいは突発的な出来事のような外的条件ばかりでなく、本能的衝動、劣等感や欲求不満といった内的葛藤を克服するには、そのように欲張って気負い立った精神的姿勢こそが禁物であります。それを忘れると、いわゆる「三日坊主」という形でたちまち挫折に追い込まれてしまいます。気負って一度に多くの時間を費やすのではなく、「ある目的のために、一日という枠の中で、どちらかと言えば少ない時間をひねり出す努力を習慣化する」ことがキーポイントになります。
3−2 小さな成功を積み重ねる
 個人差はありますが、概して人間の自己規律能力は完璧にはほど遠いものと言って過言ではありません。そのために「初詣でその他の年中行事」が人間生活の中で重要な役割を果たしているものと言えましょう。何事を始めても3日や5日のうちならともかく何週間もたてば壁や障害にぶつかるかもしれません。そんな精神的苦痛や抵抗を乗り越えるために大きな助けとなるのは、小さな目標達成を連続させることです。たとえ小さな目標であっても「目標達成の喜びと充実感」とが次の目標への自信となり、達成意欲をかきたてる源泉となるのです。
 まず小さな目標を立てそれを達成する。次にもう少し大きな目標を立てそれも達成する。このプロセスを何ヶ月も何年も続けることによって感情や欲望の制御力を養い、未経験の分野にも正面から挑戦できるような意志力ができあがってきます。
3−3 「禅の修行」との共通点
 このように小さな成功を積み重ねて、「ある目的のために、一日という枠の中で、どちらかと言えば少ない時間をひねり出す努力を習慣化する」過程は実は本能的衝動、劣等感や欲求不満といった「内的葛藤を克服していく過程」でもあるのです。
 そしてこの「内的葛藤を克服していく過程」が、「真の自己(本来の自己)を探し、それを認め、自分のものとする」という禅の修行(悟りへの道)の根底にも通じるものがあることに注目すべきであります。
 いわゆる「紫衣事件」に連座し、徳川幕府によって出羽に流罪となった沢庵宗彭禅師は後に徳川家光や柳生宗矩の帰依を受け品川に創建された東海寺の開山に迎えられました。その沢庵が柳生宗矩に与えた書簡をまとめた『不動智神妙録』において、心の鍛錬(理之修行)は常に身体的な動作に伴われたものでなくてはならないとして「事(わざ)之修行」の必要性を強調しました。それは「剣禅一如」として剣道に通じるばかりでなく、あらゆる道に通じるものであるという考え方であります。当道場の設立はこの趣旨に基づいております。心の鍛錬は体の鍛錬と並行して行われてこそ効果の上がるものだからです。
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